村上春樹とペーパーバック

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今週のお題

英語のペーパーバックを初めて読んだのは高校1年生の夏だった。当時私は村上春樹にはまっていたので、彼の書くものであれば小説のみならずエッセイもすべて読んでいた。その村上春樹が「高校時代はペーパーバックばかり読んでいた」とエッセイに書いていたため、それでは私もと真似したわけである。

読んだのは児童文学やファンタジー、ミステリーが主だった。というのも、純文学は独特な言い回しや文法が多く、辞書を引いてもあまり内容が理解できなかったからで、特にポール・オースターの文体はわかりにくいことこの上なかった。

しかし、原文ではわからなかった作品の翻訳を読むと、構文も話法もおさまりよく読めるようになっていて、翻訳家はすごいなあといつも思ったものだ。

ところで、村上春樹には「最初に英語で小説を書いてからそれを日本語に訳して完成させる」という噂があった。本人のエッセイで読んだ記憶もあるけど定かではない。ただ文体が日本文学っぽくないとはデビューのときから言われていたようだし、実際どの日本人作家とも違っていた。だからその噂には信憑性があったのである。

さて、村上春樹の初期代表作『羊をめぐる冒険』は講談社イングリッシュライブラリーでオリジナル版そのままの表紙とスタイルで文庫化されていた。ペーパーバックも良いが文庫は持ち歩きやすいし買わない手はない。もちろん買った。だが、なんと現在は講談社イングリッシュライブラリー版は絶版となっている。

羊をめぐる冒険』は英語だと『A WILD SHEEP CHASE』になるらしく、なんだか変な感じがした。が、本文の英訳は素晴らしかった!村上春樹の文体とそこから醸し出される雰囲気が見事に再現されていた。最初から最後まで、なんの違和感もなく、なんの引っかかりもない。こんな翻訳ができるのか……と感嘆するとともに、もしかしたら村上春樹の文章は英語に訳しやすいのかもしれないと思った。

そして『A WILD SHEEP CHASE』を読んで以来、日本語で書かれた本を英語で読む楽しみができた。日本語がどのように英訳されるのか知るのは面白い。外国人が日本文学をどんな風に受容するのか想像するのは愉快だ。

私は村上春樹によって、外国文学をペーパーバックで読む楽しみと日本文学を英語で読む楽しみを教えてもらったのだと言える。

ありがとう、村上春樹

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